輪島塗の工程

完成までの道のり

輪島塗の工程は、最初から最後の仕上げまで120〜130の工程があり、かかる期間は数ヶ月から1年といわれます。
しかし、その工程ひとつひとつに意味があり、手間を惜しまない積み重ねにより唯一無二の美しさが生まれます。

Legal (Law) proposal

「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」(伝産法)で定められた要件を全て満たしたものを「輪島塗」としています。

その要件は以下の通りです。

【技法】

1. 下地塗りは、次の技術または技法によること。
(1) 木地に生漆を塗付した後「着せもの漆」を塗付した麻または寒冷紗を用いて「布着せ」をすること。
(2) 生漆に米のり及び「輪島地の粉」を混ぜ合わせたものを塗付しては研ぎをすることを繰り返すこと。

2.上塗りは、精製漆を用いて「花塗」または「ろいろ塗」をすること。

3.加飾をする場合は、沈金または蒔絵によること。

4.木地造りは、次のいずれかによること。
(1) 挽き物にあっては、ろくろ台及びろくろかんなを用いて形成すること。
(2) 板物または曲げ物にあっては、「こくそ漆」を用いて成形すること。


【素材】

1.漆は天然漆とすること。
2.木地は、ヒバ ケヤキ カツラ もしくはホオノキ、またはこれらと同等の材質を有する用材とすること。

【製造地域】

石川県輪島市

Processes

輪島塗の製造は古くから分業化が進んでおり、「木地師」「塗師」「沈金師・蒔絵師」など専門の職人によって、伝統の技法が受け継がれてきました。

一例として「結び椀」が出来るまでの工程を凝縮して紹介いたします。

1:粗方(あらかた)

1:粗方(あらかた)

3年以上寝かせたケヤキを材木に使います。そこからさらに3か月以上かけて燻し、木の中に含まれている湿度を落ち着かせていきます。
2:粗方(あらかた)

2:粗方(あらかた)

表面の燻した面を削り取り、この状態からさらに3か月ほど日光が当たらない場所で寝かせ、木地を落ち着かせます。
3:素地

3:素地

最終的な形に削り出します。ここで削り出したお椀は光が透けて見えるほど薄いです。
4:木地固め

4:木地固め

木地固め生漆を木地全体に染み込ませます。これは木地全体を一度締めると同時に、ひとつひとつの木地のクセを把握するための工程です。
5:布着せ

5:布着せ

欠けやすい部分や傷みやすい部分に、漆を浸み込ませた寒冷紗などの布を貼っていきます。
6:惣身付け

6:惣身付け

最布着せで出た厚み(段差)を平らにする工程です。刻苧で使用した漆を塗り、布と木地の段を埋めます。
7:一辺地塗り

7:一辺地塗り

一辺地塗り輪島塗の最大の特徴『地の粉(じのこ)』を用いた下地工程。これを粉の粗い順に一辺地粉、二辺地粉、三辺地粉と分け、米糊と生漆と混ぜて塗っていきます。
二辺地塗り

二辺地塗り

Introduce your brand砥石などで地の粉などのザラザラした部分を研ぎ、平らにします。
9:三辺地塗り

9:三辺地塗り

地の粉のなかで最も細かい三辺地粉を使って塗ります。 いよいよ下地の最終工程が迫ってきました。
10:めすり

10:めすり

砥の粉という目の細かい粘土質の土と生漆を混ぜた「さび漆」という漆を塗ります。こうすることで全体の塗り肌を細かく、さらに凹凸がないようにしていきます。
4:木地固め

4:木地固め

いよいよ下地の完成です。砥石などに水を含ませ、表面を平らに、また人の手の脂分などを落としていきます。
12:中塗り(なかぬり)

12:中塗り(なかぬり)

中塗り漆という、これまでの生漆よりも精製され、とろみのある漆を使い塗っていきます。ここでは多少の埃がついても大丈夫です。
13:中研ぎ(なかとぎ)

13:中研ぎ(なかとぎ)

中塗りの表面に付着したほこりなどを研ぎ、平らにします。この状態を『こしらえもん』と呼びます。また、この中研ぎで木地や下地の修正点を見つけ、再度塗りこみ等をしていきます。
14:拭き上げ

14:拭き上げ

中研ぎをさらに研ぎ出し、表面を平らにすると同時に全体に付着した人の手脂などを取り除きます。ここでもし手脂の拭き残しがあると、上塗り漆がのりません。
15:上塗り(うわぬり)

15:上塗り(うわぬり)

いよいよ完成です。中塗り漆を吉野紙(和紙)でゆっくり、3回ほど漉した後、上塗り漆ができます。この漆を丁寧に、埃が付着しないよう塗りあげます。